窯たき

 

備前焼にとって、窯たきは最も重要な工程の一つです。

ひとつひとつ心をこめて作った作品を、炎のまわり具合や灰の飛び具合を考えながら、窯に詰めた後、実際に焼いてゆく、いわば最後の仕上げとなります。

どんなに良い形の作品が出来たとしても、窯たきがわるければ作品になりません。

とくに備前焼の土は焼き方に対して大変敏感なので、良い形で気に入っていた作品も、割れてしまったり、ぜんぜんいい色に焼き上がらずに、作品としては今ひとつなんて事もよくあります。

このため、窯たきを始める前は、神に無事作品が焼き上がることを祈り、火を入れるのです。

窯たきには2週間の時間を要します。このページでは、備前焼の窯たきの行程をご紹介します。

初日

無事焼き上がることを神に祈ります。火入れ直前の登り窯の全景です。

祈願

盛り塩と御神酒を備えます。

軍手

高温になる窯たきにはこの軍手がかかせません。 ナイロンが入っていない純綿の材質で手袋に火がつきにくくなっています。 窯の温度が1,000℃を越えると近づいただけでも着火してしまうので窯たきには欠かせないアイテムです。

大量の松割木

備前焼の窯たきでは松の割木が使われます。窯たきでは大量の松割木が使用されます。また、行程によって割木の大きさの調整も行われます。

二四時間・三交替

火が入りました。ここから約2週間、24時間交替で火加減を見守ります。

厳粛な空気

火入れの瞬間、厳粛な空気が漂います。

窯たき二日目

薪を焚き口のなかに入れ窯の中の温度をゆっくりと上げていきます。2日目になると窯の中に対流がうまれ焚き口から外の空気が吸われるようになります。

窯たき三日目

炎の勢いが徐々に増しています。

窯たき四日目

夕方、焚き口から4mほど離れた温度計を起動

窯たき五日目

横焚き用の薪を割っている作業です

窯たき六日目

焚き口から4Mほど離れた温度計は645℃。

窯たき七日目

800℃を越えたところから火の動きが変わってきます。

窯たき八日目

中の色が変わってきます。1,000℃近くになると赤松でしか温度が上がらなくなってきます。焚きはじめてから171時間を過ぎたところで1,000℃を記録

窯たき九日目

1,000℃を越えるとなかに引き込まれる空気の量が多くなり風の音が大きくなります。カメラのレンズも限界が近く、2Mほど離れたところでの撮影しかできません。

窯たき十日目

炎の色が白っぽくなり近くに有る物へ着火してしまいます。

窯たき十一日目

1,200℃が近くなると危険との隣り合わせです。

窯たき十二日目

いよいよ大詰めです。窯の中のすべてのものが熱により赤くなっています。

窯たき十三日目

午前6時から横焚きの開始です。

横焚きとは

前からの焚き口からだけではなく長い窯の中の温度が全体に上がるように数メートルごとにある横の焚き口からも焼いていくことです。

横焚き

横焚きの時に使用する薪は赤松を細く割ったもので着火しやすくしています。

横焚き

横焚きの時は外からの外気が極力入らないよう鉄の蓋で抑えをします。横焚きの際の温度計は焚き口に合わせて上へ上へ差し替えていきます。

横焚き

横焚きで温度が1,200℃を越えると下から上の焚き口へと移動していきます。焚き終わった口は耐火煉瓦と耐火モルタルで蓋をしていきます。

焚き口を閉める

焚きはじめてから293時間を経過したところで前の焚き口を閉め横焚きのみの作業に入ります。窯の周囲の温度は30℃を越え体感的には砂漠にいるようです

煙道

これは煙道(えんどう)と言い、簡単に説明すると煙突です。半地下式穴窯の煙突は立てに延びるのではなく窯と同じように山の斜面に沿って斜めに出ています。

最終作業

窯焚きをはじめてから301時間!煙道を閉めて窯焚きの終了です。

煙道

家の窯の場合は煙を出さず焼く焚き方なので目には見えませんが、煙道から出る熱気も当然1,200℃を越えるものが吹き出ています。正面に立てばあっという間に火がついてしまいます。

無事窯たきの終了

あとは10日ほど自然に温度が下がるのを待って窯出しです。

達成感

窯を開けるまで作品の出来上がりは分からないので、まだ気は抜けませんが疲労と達成感に満ちた安堵のひとときです。